できる・できないの判断は専門家にしてもらう必要があるのですが、勉強ができない理由が「やり方」によるものなのか、「本当にできないのか」がわからず、専門家に相談するべきかどうか迷って身動きが取れない親も多いはずです。
そのような親が最低限の判断ができるよう、私の経験上「学習障害(LD)」「知的ボーダー(IQが85~70の範囲前後に当てはまる)」の可能性が考えられる特徴を書いておきます。
なお、「学習障害」が原因なのか「知的ボーダー」にいるのかの判断はできません。
ですので、以下の内容を読んで「それは学習障害が原因ではなく知的ボーダーなのでは?」といった視点をもって読んでも意味がありません。
仮にそういうことを気にされる方がいるとすれば「勉強が極端に苦手」という共通点があるという視点で読んでもらえると助かります。
もくじ
始めに
私は小児科医・精神保健福祉士・臨床心理士などの資格をもち積極的に学習障害を抱えた人に関わっている専門家ではありません。
ですので、個人的な勝手な思い込みで、見当違いなことを書いてしまっている可能性も考えられます。
「子どもの教育を真剣に考えている素人が経験をもとにまとめたものでしかない」ということを前提に、専門家に相談するかどうかの判断材料の一つとして参考にしてください。
参考にする前に以下のことも知っておいてください。
継続的な努力による変化はありますが、勉強はスポーツと同様に個人の理解力・得意分野・暗記力などで能力差があります(市販されている勉強本には「能力差はなく努力・やり方でみんな同じようにできるようになる」と書かれてあるものが多いですが)。
また、勉強習慣がある子とない子では理解・暗記のスピードにかなりの差があります。
年齢によって脳の発達状況も異なりますし、発達進度にも個人差があります(単純暗記が得意な時期、苦手になる時期などがあると言われています)。
勉強のやり方に問題があったり、集中せずにダラダラしていることが原因で勉強ができていないことも考えられます。
始めはどれだけ勉強をしてもできなかったのに、慣れてくることで(半年なのか1年なのか、もしくはそれ以上かかるかは分かりません)周りの人と同じようにできるようになることもあります。
ASD(自閉症スペクトラム)やADHD(注意欠陥多動性障害)などが強く影響している可能性もあります。
人の話を集中して聞くことができず、塾に通っても結局一人で勉強をしているのと同じようになり成績が伸びないということも考えられます(中止しても簡単に治るようなものではない)。
置かれている環境に問題がある場合、例えば虐待(自分の行動が虐待に当たるかもしれないということに気づいていない親は意外と多いはずです)をされていたり、学校で不安定な環境(友達関係に長期的な問題がある場合)にいたりする場合、勉強ができなくなる可能性も考えられます。
つまり、「勉強ができない」のは「学習障害」「知的ボーダー」が原因でないことも十分考えられるということを知ったうえで以下を読んでください。
定期テストで平均点以上取れる場合もある
小学校で実施されているカラフルなテストはものすごく簡単です。
極端に暗記が苦手である場合を除き80点以上取れることもあるはずです。
ですので、「小学校のときにできていた」からといって、「学習障害」の可能性が否定されるわけではないと私は思っています。
中学生の定期テストはどうでしょうか。
中学生の定期テストでは、少なくとも中学1年の初めてのテストは勉強をしなくても各科目70点前後は取れてしまうはずです。
なので、この時点では小学校の時のカラフルなテストと同じように点数を見るだけでは極端に苦手なのかどうかの判断は難しいです。
また、極端に勉強ができない場合でなくとも、時間が経過するごとに点数は下がってくるのが普通です。
中学1年の1学期は400点取っていたのに、中学3年になるころには200点前半しか取れなくなる子もたくさんいます。
200点前後しか取れない場合、苦手な部分がある可能性は十分考えられますが、ない可能性も十分考えられます。
つまり、200点前後の点数を自分の子供がとってきたとしても、点数だけを見ても何も分からないのです。
これが、本気で勉強をしているのに各科目30点未満しか取れないのであれば「もしかしたら?」と親も気づくことができるかもしれませんが、50点前後、科目によっては80点以上を取れてしまう場合、気づけないはずです。
何が言いたいのかというと、子どもが努力に見合うような点数が取れず「なんでだろう」ということが続いた場合、定期テストの点数だけをみるのではなく「点数が取れていない原因」をしっかり見てもらいたいのです。
私の経験上、勉強をそれなりにしているのに成績が伸びず「今通っている塾では指導力がないから変える」という意図で転塾を考えている親は、自分の子供が勉強が極端に苦手だと気づいてないことが多いように思えます。
もちろん、指導力のない塾は多くあります。
実際に私の塾に転塾してくる子の大半が平均前後なのですが、その多くは入塾後初めての定期テストで平均点プラス50点以上とるようになります。
5教科の合計点でみると、200点前半で入塾してきた子の多くは入塾後初めての定期テストで100点以上点数を上げることが多いですし、中には170点も伸ばした子がいます。
過去最高点を取る子も何人も見てきました(何人もと言っても塾生が少ないので何十人もというわけではありません)。
しかし、これらは勉強をさぼってきたことが原因だっただけで、「本気で勉強をしていたのに平均点以下」という子ではありません(しかし、暗記ならできるというタイプで、実力テスト(特に国語・英語)になるとかなり厳しいという子もいました)。
中には本当に「やり方」が原因だったこともありましたが、中学生の定期テストは「暗記さえできれば」、つまり、親が「勉強をしている」と思えるくらいの勉強量(暗記)を子供が本当にこなしているのであれば、「やり方」が問題でないことが多いのです。
仮に「やり方」が問題だったのなら、それは表面的にしか子供の勉強を見ておらず、口だけ「勉強しなさい」とか「塾や通信教材をさせておけば大丈夫だろう」というタイプの親なのだと思います。
普段から学校の宿題はしている、塾にも通っている、定期テスト前は3時間以上はしている、にもかかわらず50点くらいしか取れない、というのであれば「学習障害」「知的ボーダー」の可能性も考えなければなりません。
努力に見合う点数が取れていない原因を、できる範囲で構わないので親が自分で把握する努力をしてもらえると嬉しいです。
※ 小学生のカラフルのテストで点数が取れないということだけで「極端に苦手」という判断はできません。私は小学4年~6年のときから30点~50点を取っていましたし、70点以上取ること滅多にありませんでした(取れたら親に喜ばれたくらいです)
ワーキングメモリ
ワーキングメモリを一言で説明すると「短期的に記憶をする脳の働き」です。
ワーキングメモリが弱いことで、記憶を一時的にためておくことができず、長期記憶(記憶が定着する)にもっていくことが難しいこともあります。
当然、ワーキングメモリが弱ければ国語・理科・社会・英語・数学すべての科目に影響します。
10個程度の漢字や英単語であれば、正しいやり方で暗記(忘れることを念頭に記憶にしっかりと定着させる)をすれば8~10個は覚えていられます。
しかし、ワーキングメモリが弱い(可能性のある)場合、1・2個しか覚えていないということが起こります。
定期テストの前日に必死に暗記をしたのに、ほとんど覚えることができずに0点~30点(適当に記号を書いても定期テストで1桁になることは滅多にありませんが)ということが起こります。
勝手な判断はできませんが、どれだけ勉強をしても公立中学の定期テストでどの科目も50点未満しかとれない場合は「ワーキングメモリ」が弱い可能性も考えるべきだと思います。
もし、自分の子のワーキングメモリが気になる場合、ランダムに7個数字を読み上げてスムースに復唱ができるかを確認してみてください。
このような確認の仕方は不正確ですし、やるべきではないと思いますが、自分の子供がなぜ勉強ができないのか不安で仕方ない、原因を知りたいという方もいるはずなので、書くことにしました。
決して、学校の先生や塾の先生は「可能性があるかも」と思ったとしても自分の受け持っている生徒にしないでください。
受け持っている子がその可能性が高かったとしても、勝手な判断をするのではなく、やり方によってどうにかならないか考え続けてください。
実力テストができない
法が施行されてから数年経つと「学習障害」の存在を知る人が増えました(言葉が独り歩きしている感はありますが)。
それまでは「定期テストは30点未満。実力テストでは記号問題を適当に書いて点数がついているだけ」という状況でも「学習障害」の可能性に気づかない人が多くいましたが、今はそういう状況で「学習障害」を疑わない人はほとんどいないはずです。
ですのでここでは「定期テストでは50点前後は取れる」「実力テストは科目によっては3・4割は取れるが1桁の科目もある」というような状況の人に向けて書きます。
定期テストができるのに実力テストができない原因の1つは演習不足です。
定期テストでは暗記さえすれば高得点が取れてしまうので、実力テストでも同じような勉強をすればいいと思い、演習の重要性に気づいていないのです。
もし、受験期にも関わらず暗記しかしていないのであれば、演習も適度に入れるようにしてください。
そうすれば少しずつ成績が伸び始めるはずです。
しかし、「暗記も演習もしている」「やり方に問題はおそらくない」にも拘わらず、実力テストができない場合があります。
「1+1=2」や「水素=H」「794年に桓武天皇が平安京遷都」という理解を伴わずに単なるパターンとして暗記はできるが、少し質問の仕方を変えられるとまったく応用が利かないのです。
このような場合「理科・社会」はある程度できるが「国語・英語・数学(すべて、もしくは1科目)」はどうにもならない状況にいるかもしれません。
英語は積み重ねが必要な科目なので「理科・社会」のように理解していなくても単純に暗記さえしていれば解ける問題が少ないのです。
「持っている知識を結び付けて新しい問題」「初めて見る問題」を、その場で自分で考えることができない場合、定期テストはできても実力テストはできないということが起こりやすいです。
もちろん「問題の意図を理解できない」単なる読解力の問題であることも考えられるので、「英語ができない」というだけで勝手な判断をしてはダメです。
何が原因で実力テストができないか、発達障害のことをそれなりに考えている私でも判断不可能(してはいけない)ので、こういう状況にいる場合専門家に相談するしかないと思います。
もし、入試直前期に「どうしても公立高校に進学しなければならないのに、英語がどうしてもできない」という場合、相談する時間がないと思うので、英語を捨てて他の科目でカバーをするようにするなど考え方を変えてみてください。